昭和の時代からEP(シングル)やLP(アルバム)と呼ばれて音源の主流だったアナログレコードはCD(コンパクトディスク)の出現によって主役の座を奪われましたが、ここのところ見直されて人気が再燃しているようです。
「針がおりる瞬間」はワクワク、アナログレコードの空気感としての魅力を考えてみましょう
JUDY AND MARYの元ボーカリストで歌手のYUKIは先日、FMラジオ番組で「自宅ではアナログレコードを聴くことが多く、レコードプレーヤーにレコードを置いて針を集中して落とす」そんな面倒な行程をあえてすることが特別な感じで好きだと話していました。
これってレコードプレーヤーを使ったことがある人しか分からないと思いますが、ロックバンド・ザ50回転ズの楽曲『Vinyl Change The World』のミュージックビデオは昔よくあった街のレコード店を舞台にしており、当時の雰囲気が感じられます。
『Vinyl Change The World』はザ50回転ズが影響を受けたビートルズやラモーンズのことを(バンド名を直接出してはいないものの)歌っており、アナログレコード(音楽用語でビニール)を聴いてロックを知った青春時代が思い浮かぶよう。
プリンセス プリンセスの代表曲『Diamonds』(1989年)の歌詞にある「針がおりる瞬間」のワクワク感などもレコードプレーヤーならでは味わえるもので、冒頭で取り上げたYUKIが自宅でアナログレコードを聴く楽しみもそんなところなのではないでしょうか。
アナログレコード、CD、ストリーミング配信の誤解しやすい音質の違い 新技術ほど音がよいわけではない
私はジャズ・サックス奏者のソニー・ロリンズが好きで、ライブを収録したアナログレコードの『Night At The Village Vanguard』(ヴィレッジ・ヴァンガードの夜)をかなり聴きこみ、特に『オールド・デヴィル・ムーン』がお気に入りでした。
ちょうどCD(コンパクトディスク)が普及し始めてアナログ音源をデジタル化して「クリアで人の息づかいまで聞こえる」という触れ込みで『Night At The Village Vanguard』コンプリートCD番が発売されたので、喜んでレコードショップに走ったものです。
「さあいい音で聴くぞ!」とCDプレーヤーのプレイボタンを押したのですが、流れてきた『オールド・デヴィル・ムーン』は何度聴いてもどこか違う。クリアな音質ではあるのですが、アナログレコードに比べて奥深さがなくてもっと言えば味がない感じ・・・このような経験したことはありませんか。
レコーディングした音源をアナログレコードにする時はビニール盤に溝を掘るというまさにアナログ(情報を連続的な量として扱う)な方法で行うわけですが、CDにする時には音源をデジタル化するため単純に言えば「0」と「1」に記号化します。記号化する段階で削り落とされる音があるためアナログに比べて深みがないのでしょう。(専門的なことは分かりませんが)
アナログレコード、CD、ストリーミング配信の音質についてはサカナクションの山口一郎がFMラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!Y』の「サカナLOCKS!」で2015年2月に分かりやすく話していました。
最新技術によるハイレゾ(High-Resolution Audio))配信の場合はCD音源の情報量より6.5倍大きいと言われ、それだけCDの音質は薄っぺらい感じがするわけです。逆にアナログとなれば「濃縮還元していない果汁100%っていうこと。つまり、果物をそのまま絞ったものをゴクッと飲むのがアナログだ」と山口先生。
音楽配信のサブスク(Subscription)によるストリーミング音源にも種類があって、圧縮した少ないデータ容量のものからロスレスやハイレゾ音源といった高音質なものまであり、利用料金と音質を考えて選ぶとよいかもしれませんね。
画像は『YouTubeザ50回転ズOfficialチャンネル 2016年6月3日公開「ザ50回転ズ『Vinyl Change The World』MV Full Ver.」』のサムネイル